シラバス詳細

タイトル「2024年度」、カテゴリ「経済学部」

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科目情報

科目名

発達と学習

クラス

01

担当教員

山森 光陽

実務経験のある教員による授業科目
学年

1年

開講学期

前期

開講時期

前期

曜日・時限

火1

科目種別

ナンバリング

科目区分

◇教職 教職科目

単位区分

要件外

単位数

2

準備事項

備考

講義情報

学習目標(到達目標)

本講義では,以下の能力を身につけることを目指します。
1. 幼児,児童及び生徒の心身の発達に対する外的及び内的要因の相互作用,発達に関する代表的理論を踏まえ,発達の概念及び教育における発達理解の意義を説明できる。
2. 乳幼児期から青年期の各時期における運動発達・言語発達・認知発達・社会性の発達について,その具体的な内容を説明できる。
3. 様々な学習の形態や概念及びその過程を説明する代表的理論の基礎を説明できる。
4. 主体的学習を支える動機づけ・集団づくり・学習評価の在り方について,発達の特徴と関連付けて説明できる。
5. 幼児,児童及び生徒の心身の発達を踏まえ,主体的な学習活動を支える指導の基礎となる考え方を説明できる。

授業概要(教育目的)

教育心理学とは,人の育ちと学びの一般的傾向と個人差を解明するとともに,より「よい」教育のありかたを探究する科学です。教育心理学の特徴の一つは,人を「よく」したいという欲求に支えられた行動であり,人間を特徴付ける行為である教育の心理的メカニズムを実証的に明らかにし,理論構築を目指すことにあります。もう一つの特徴は,蓄積された研究知見群を参照しながら,より「よい」と思われる学び方や教え方を導き,これらの効果と,効果がもたらされる過程を反証可能な形で記述するという点です。
この授業では,教育心理学の主要分野のうち,発達,教授・学習,社会,測定・評価,思考・認知の各分野の基礎的な理論を概説します。さらに,発達の過程,学習指導の効果,個人差による効果の違いに関する,最新の研究知見をとりあげ,これらの内容を検討します。
幼児,児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程について,基礎的な知識を身につけ,各発達段階における心理的特性を踏まえた学習活動を支える指導の基礎となる考え方を理解することが,この授業の目的です。

授業計画表(15週)

項目

内容

第1回

「発達と学習」を学ぶ意義

教師になるためには「発達と学習」について学ぶ必要がある理由を,学生の関心も踏まえながら議論するとともに,教育心理学とは何かを検討する。
【事前学習】2時間
テキストの序章と読み,教育学と教育心理学の関係,心理学と教育心理学の関係について考える。
【事後学習】2時間
テキスト12-16ページ,144-154ページを読み,発達とは何か,学習とは何かを端的にまとめる。

第2回

認知能力と社会性の発達

認知能力とは,環境に効果的にかかわりながら課題を解決したり学習したりする能力といえる。そして,このような能力は,他者をはじめとした環境に働きかけることで発達することから,社会性の発達もともなう必要がある。認知能力の発達と,社会性の発達について概説し,これらの関係について議論する。
【事前学習】2時間
教育経済学では「認知能力」「非認知能力」という用語がどのような意味で用いられているのかを調べる。
【事後学習】2時間
道徳性の発達がなぜ認知能力の発達の一部と捉えられているのか,その理由を考察し,説明する。

第3回

言語能力と運動能力の発達

他者をはじめとした環境に働きかけるためには,言葉を操り,身体を動かすことが必要である。また,思考を巡らすにも言語は欠かせません。言語能力や運動能力は年齢とともにどのように発達していくのかを解説する。
【事前学習】2時間
テキスト155ページの「言語の学習の臨界期」を読む。
【事後学習】2時間
テキスト66ページで述べられている「メタ言語の発達」の意義について,自身の言語学習の経験を踏まえて考察し,説明する。

第4回

生徒が学校に携えてくるもの

一人の生徒は,運動能力,言語能力,認知能力,社会性をどのように発達させ,中学校や高等学校に進学することとなるのか,これらの発達を時間軸でまとめ,生徒は何を教室に携えてくるのかを概略的にとらえる。
【事前学習】2時間
運動能力,言語能力,認知能力,社会性のいずれかについての発達の傾向を,年齢を軸とした図にまとめる。
【事後学習】2時間
運動能力,言語能力,認知能力,社会性の発達を年齢を軸とした図にまとめ,説明する。

第5回

パーソナリティの発達

環境への適応の仕方に関する個人の特徴であるパーソナリティとは何かを解説するとともに,中学生,高校生は,パーソナリティの発達から見ると,どのように育ち,育とうとしているのかを,最新の研究論文を読んで検討する。
【事前学習】2時間
配布したビッグファイブパーソナリティ尺度の内容を検討し,パーソナリティはどのように構造化して捉えられているのかを考える。
【事後学習】2時間
教科書124ページに「ビッグ・ファイブのNEOの尺度では,遺伝の影響度は平均で48%」と述べられているが,遺伝率とは何かを調べ,一般の方が誤解なく理解できるような説明をする。

第6回

知識の獲得

学習とは,「持ち合わせた能力を発揮し,既有知識に新たな知識を付加し,知識の構造を再構成し,概念化すること」と言える。知識を付加し,知識の構造を再構成する仕組みと,既有知識の役割について解説する。
【事前学習】2時間
コンピュータはどのように情報を処理しているのかを調べる。
【事後学習】2時間
精緻化と呼ばれる処理がなぜ重要なのか,テキストと講義の内容をまとめ,説明する。

第7回

思考とメタ認知

問題解決における思考と,思考におけるメタ認知の役割を概説し,思考力の育成を図る方法を議論する。
【事前学習】2時間
一人で学習をする場合,グループで学習する場合,それぞれの利点と難点を考える。
【事後学習】2時間
テキスト186ページに「問題解決場面において表面的な解決法を教え,それを反復させるだけでは,必ずしも適切な問題表象を形成できる学習者になるとはいえない」と述べられている。その理由を「知識の獲得」の授業内容を参照して説明する。

第8回

様々な学習方法の効果(1)

様々な学習の形態の中から,テキストへの線引き,練習テスト,コンセプトマップの効果に関する研究論文を取り上げ,様々な学習方法の効果を検討する。
【事前学習】2時間
知識の獲得,思考とメタ認知の授業内容から,効果的な学習方法にはどのような特徴があるかを考える。
【事後学習】2時間
テキストへの線引き,練習テスト,コンセプトマップのいずれかについて,その効果を要約し,効果が見られる背景を,教育心理学の知見にもとづいて理論的に説明する。

第9回

様々な学習方法の効果(2)

効果的と考えられる学習方法に共通する特徴を,教育心理学の知見にもとづいて理論的に検討する。
【事前学習】2時間
テキストへの線引き,練習テスト,コンセプトマップのいずれかについて,その効果を要約し,効果が見られる背景を,教育心理学の知見にもとづいて理論的に説明する。
【事後学習】2時間
テキストへの線引き,練習テスト,コンセプトマップの効果のそれぞれを要約し,効果的と考えられる学習方法に共通する特徴を,教育心理学の知見にもとづいて理論的に説明する。

第10回

動機づけ

学習意欲は重要と言われているが,動機づけ研究の分野では,「やる気」という一言では説明できないくらい,多くの理論が提案されている。動機づけに関する様々な理論を概観し,整理し,主体的学習を支える学習指導と教育環境のあり方を検討する。
【事前学習】2時間
学習に対する「やる気」はどのように生起し,維持されるか,自身のこれまでの経験をもとに考える。
【事後学習】2時間
動機づけを高める,あるいは維持する方法の一つに,学習内容を確実に身につけさせることが考えられる。それはなぜだと思うか,テキストと授業内容ともとに考察し,説明する。

第11回

他者とかかわりながら学ぶ

学校での学習の特徴は,教師の指導のもとで他者とかかわりながら学ぶというところにある。生徒どうしの関係が学力に与える影響関する研究論文をとりあげ,ともに学ぶものがいる教室ならではの学習の意義を検討する。
【事前学習】2時間
教室で授業を受ける場合と,一人でオンデマンド授業を受ける場合とでは,授業の受け方がどう異なるか考える。
【事後学習】2時間
テキストの随所に協同学習について言及されている。これらをまとめ,協同学習の意義を説明する。

第12回

学習評価

学習評価は,生徒の学習への取り組み方にも影響することが,多くの研究で明らかとなっている。成績をつけるだけにとどまらず,生徒が主体的に学習に取り組めるようにするための学習評価の方法を検討する。
【事前学習】2時間
中学校から高校での定期考査の結果はどのように返却されることが多かったか,また,その際にどのようなことを感じたのかを考える。
【事後学習】2時間
テキストの随所で述べられている「自己調整学習」とは何かをまとめ,これに対する学習評価の役割を考察し,説明する。

第13回

主体的学習を支える動機づけ・集団づくり・学習評価の在り方

生徒が主体的に学習に取り組めるようにするには,教師が生徒の発達の状況を踏まえつつ,生徒に働きかけるとともに,生徒間関係にも注意を払いながら,環境を整える必要がある。動機づけ,他者とかかわりながら学ぶ,学習評価の講義内容と,これまでに扱った中高生の発達的特徴とを関連づけ,生徒の主体的学習を支えるための教師の仕事のあり方をまとめる。
【事前学習】2時間
動機づけ,他者とかかわりながら学ぶ,学習評価の講義内容の関連を図でまとめる。
【事後学習】2時間
動機づけ,他者とかかわりながら学ぶ,学習評価の講義内容の関連を図にまとめ,説明する。

第14回

個人差と学習環境の交互作用

生徒一人ひとりの学習成果は,生徒自身が持つ個人差と,指導方法,内容や教育環境との交互作用によって発現する。このような現象は適性処遇交互作用と呼ばれ,教育心理学の重要なパラダイムの一つである。適性処遇交互作用の具体例を示すとともに,このパラダイムの教育的意義を議論する。
【事前学習】2時間
学習指導の「個別最適化」を実現するための方法を考える。
【事後学習】2時間
指示した論文を読み,適性処遇交互作用に焦点を当てて説明する。

第15回

生徒の発達的特徴,個人差,学習活動が展開される環境の違いを踏まえた効果的な学習活動の計画と実施

これまでの授業で扱った内容を,統合的にとらえなおす議論を行い,発達段階を見通し個人差を考慮した学習活動を,実証的知見を根拠とした理路の通った説明にもとづいて計画・実施するための考え方として再構成する。
【事前学習】2時間
第14回までの各回の授業内容の相互関連を図でまとめる。
【事後学習】2時間
学習目標にあげた内容に到達したことを示す証拠となるようなレポートを執筆し,最終課題として提出する。

授業形式

授業では,講義以外に,グループワークを取り入れ,内容の理解が促進されるようにします。事後学習の成果は,次回の授業でマイクロティーチングの形で発表していただき,教師に求められる指導技術も体験できるようにします。Webclassなどで資料配付や教員への質問の受け付け,教室全体での議論を行いますので,パソコンかタブレットを毎回持参してください。

評価方法

授業内試験

レポート

小テスト

授業への参画度

その他

合計

60

40

100

評価の特記事項

具体的な評価方法は授業で説明します。

テキスト

安藤寿康・鹿毛雅治編,『教育心理学──教育の科学的解明をめざして』,慶應義塾大学出版会,2013年,2,500円(税抜).

参考文献

市川伸一,『これからの学力と学習支援──心理学から見た学び』,左右社,2023年.
持丸正明・山中龍宏・西田佳史・河内まき子編,『子ども計測ハンドブック』,朝倉書店,2013年.
田島信元・岩立志津夫・長崎勤,『新・発達心理学ハンドブック』,福村出版,2016年.

オフィスアワー

授業時に指示する

学生へのメッセージ(事前・事後学習の内容など)

教育心理学は,子どもが学びに向かい,学び続け,出来ることが増えていく学習活動を教師が実現するために不可欠な学問です。Intellectual humility (知的謙虚さ) を持ちながら学修に臨んでください。

授業用URL

参考URL1

参考URL2